t-yosh’s blog

元ソフトウェアエンジニアが、モノづくりについて学んでいるブログです。モノづくりに必要なハードウェア・ソフトウェア・デザインのことを書いています。

柳宗理 エッセイ

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柳宗理 エッセイ

柳宗理さんの連載していた記事や雑誌の記事を集めた本。

柳宗理さんは、キッチン用品のイメージが大きかったんですが、結構イメージが変わりました。

宗理さんの仕事に対する考え方、デザインの手法、民藝品に関する考察、工業製品で民藝の心を宿すもの、父に対する思い、などなどが綴られています。

読んでいて面白いな、と思ったのが結構あって、いくつか紹介します。

・クライアントとの仕事のやり取り

柳宗理さんとも言え、仕事をする上で賛成派、反対派、やる気のない人、思いのある人、色々な人と喧々諤々しながら活動をしていたという様子が見えます。何事も愚直にコツコツというのは時代も変わらずみな同じですね。

・科学について

バタフライスツールという椅子が有名ですが、この椅子の着想が合板の曲げ加工技術にあった、というのに驚きました。椅子のアイデアが先ではなくて、曲げ加工の技術を先に知って、これは何かに使えるのではないか、とアンテナを張っていたそうです。

アノニマスデザインについて

デザインしないデザインなんですね。登山のピッケル、野球ボール、祭りに使うお面、江戸の火消しの纏、どれも機能的な必要に沿って形が変わり最適化されたモノたち。これを要の美という、みたいな。確かにデザインしないで年月を経てその形になったものは、最善のデザインだ、という考え方はありますよね。

・モノを紹介していく章

ここはとても、面白かった。ブラウンの電卓とか、照明器具とか、栓抜きとか、色々なものを見てここが良い、とか言っていきます。途中、ケメックスのコーヒーメーカに関する考察が出てくるのですが、ここの文章を読むと、アメリカのイームズの家にいったら、これでコーヒーを出してくれて、大変気に入ったので帰ってから急いで買った。やっぱいいよね、とあり、普通に気に入って買ったのか、意外とミーハーっぽいんだな、とか思って、急に柳宗理さんが身近な感じに思いました。

・民藝品についての文章は結構長くて、美術的、文化的価値について、とか堅い話が続きます。一方で日本民藝館を建てた父と自分との関係性も絡んで色々な話が出てきて、家族の思い、民藝に関する思いは一読の価値ありです。

これを見て日本民藝館に行ってみたいと思いました。

 

全体を通して、新しい気づきがあった本でした。最初の方が、当時のデザインに関しての説教みたいので始まるので読みづらかったのですが、モノに関する考察からデザイン論は直球でプロダクトデザイン切り口なので、とても参考になりました。