バラの花にも棘がある 「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム
「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム
こちらの本を読みました。サイバーマンデーって何なのよ、とか思ってましたが、値引きされててラッキー!とぽちりました。
メイカーズのエコシステムを前に読みましたが、ものづくりをするのなら深圳がアツイ!ここを見とかないと世界に遅れる!ビル丸ごとLEDを売っている規模だぞ!という感じで注目されるシステムについて非常に面白く、メイカーにはバラ色の興味深い内容でした。
そんな深圳ですが、こちらの本は、バラの花の「棘」の部分が多く紹介されているように感じました。著者が中国で長く仕事をしてきた経験から、「棘」をリアルに語っている経験談にとても惹きつけられました。
私は深圳に行ったことはないのですが、サイバーパンク的な玉石混合で混沌としたイメージがあって、そこに集まる人間の利害によって世界に類をみない合理的な仕組みができている。という風に聞いています。ものを作る工程を合理化していくプロセスイノベーションの最たる例とも書いてありました。
深圳にあるエコシステムを求めて、多くのハードウェアのスタートアップが集まっており、かなり興味を引く場所なのですが、玉石混合ゆえのわけのわからない罠が当然あるだろう、とは思っていました。というのも、自分も中国でのOEM経験が少しあるので、中国の方のイメージはあるのです。
読んでみて思いましたが、少量生産での取引は私が思っているよりもかなり劇的な様子でした。ちょっと、こういうことあるなら無理じゃない!?みたいな感じです。
ただ、棘や罠の紹介をたくさんしたうえでも、特にハードウェアスタートアップが少量で量産する(1000ロットくらい)ことに関しては深圳でやるメリットが多く挑戦すべきだと書いてある点がとても印象的でした。
注意を喚起したうえで、「覚悟をもって挑戦する価値はある場所だ」、ということでしょうか。
以下、本を読んでて印象的だった内容を軽く紹介します。
<本の前半>
中国でものを作るさいに、ありものの製品を使ってラベルのみで自社製品に仕立てるやり方や、そこにオリジナルの要素を加えて作る方法、スクラッチで一から設計する際にも、エコシステムを利用する方法がある、といった話が具体例と一緒に紹介されます。
また、そういった開発をするうえで起こる罠、(契約書の無意味さ、メーカーの夜逃げ、部品パーツの寿命の短さ、など)の話がでてきます。こういった話は前から聞いて知っているのですが、著者の経験から夜逃げした方の言い分なども紹介されていて、そういうことが起こる背景や中国の方の素性みたいなところも感じられて、非常にリアルでした。
<本の後半>
深圳での量産時のロット数の例(中国は1000ロットからできるが、日本では10000ロットから、etc)や、モジュールの選択による末端価格の差などが、こちらもやはり具体的な数値などを紹介してくれていて、とても勉強になりました。
IoTを作るうえでのハードウェアの品質や性能の割り切りについてはここでも言及がありました。量産ロット全体のコストからみて、ほんとに3Gが必要なのか?その品質は必要なのか?、という観点はIoTでは常に考えないといけないですね。
VCからの資金調達の際の造反組の話なども興味深いところでした。深圳とは直接関係ない話とは思いますが、ベンチャーゆえのこの手の罠も実際にあるんだな、と思いました。
中国での量産を考えている人は読んでおくと、罠への覚悟や危機管理のために役に立つのではないでしょうか。