11/1 ものづくりセミナー
3Dものづくりの新潮流
東京都産業技術センターの3Dものづくりに関するセミナーがありました。
発表が面白かったので、メモしておきます。
セミナーは以下の四つの内容の話で構成
- 3D-CAD
- 構造最適化設計/解析
- リバースエンジニアリング
- マテリアル
1 Auto desk の3Dモデリングについての話
営業っぽい感じもありますが、Autodeskさんの取り組みは個人的に注目していますし、夢があって聞いてて心が躍ります。
・ジェネレーティブデザイン
AIを設計に活用するもので、設計者がやらなくてもよい設計要素を省くという発想で構造の最適化を自動で行うツール。OrbitecのロードバイクやAirBusの軽量化などで利用されているツールとのこと。
詳しくはエアバスのジェネレーティブ デザイン | ユーザ事例 | オートデスク
ORBITRECのロードバイク https://www.autodesk.co.jp/redshift/orbitrec/
エアバスの軽量化 http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1701/12/news009.html
興味深い内容としては、AIによる自動設計の結果、自然界の構造に近い構造が生成されることが多いという話でした。ドローンの形状がムササビの骨格に似てきたという例がありました。目的のために最適化させると自然にあるものに近づくというのは納得できますよね。
ここでどのように自動で最適化されていくのか、という観点ですが、構造最適化の方向性として、ラティス構造(骨のような構造に最適化することで軽量化する構造、こうすることで軽量・材料の削減ができる。)、トポロジ最適化(表面形状に加え中も変えて最適化する。)というのがあるそうです。
これまた面白い話として、これらの自動で最適化するツ-ルをAutoDeskが提供しているのですが、変更させる構造のパターンをランダムで生成するのは難しいらしく、このパターンを作るのにバクテリアの培養で生成されたパターンをデータ化している、というようなことを話していました。未来感のある設計ですよね。
https://www.mztimes-scsk.jp/archives/1156
・Eagleとの 連携
Eagleの電子基板と部品の形状情報をFusionに取り込みする、基板のレイアウト変更を即座に筐体側に反映する。自分のように基板と筐体と行き来して設計する時に大変役に立つ連携ですね。早いうちに試してみます。
詳細はこちら
Fusion 360 Integration with EAGLE How-To | EAGLE | Blog
基板情報からケースを作るまでの動画
・金型作成
CAD上で金型を作成する応用例。最適なクーリングラインをAIで作成する。ラティス構造化により最適な必要最小限の型を生成する。
これまでの金型は切削が多く、クーリングラインは切削で作成できる直線だったが、最適なクーリングラインは熱解析によって得られ、そのラインは切削では作成できないが3Dプリンター(主に金属)なら実現できる、という内容。
詳細
FEM 冷却解析クイック スタート チュートリアル | Moldflow Insight | Autodesk Knowledge Network
・IoTの取り組み
テスト用のハードウェアにセンサーを付けて、テストした結果を筐体設計にフィードバックさせて設計する。構造最適化などのパラメータに実センサーの情報を使う、という話。レーシングカーに100のセンサーを載せて、設計にフィードバックしている、という話でした。このあたりの話はこちらにあります。
車の例は以下の動画で出てきます。
2 構造最適化設計の話
くいんと(株式会社くいんと - 夢のあるCAEを日本から)という会社の方のお話。
30年前くらいから構造最適化に取り組んでいる会社さんです。
昔は最適な構造がわかってもそれを作る方法がなかったが、 今は3Dプリンタで作れるようになったし、最適化された構造を3Dデータ化できる時代になった。最近、構造最適化のツールが注目されてきた、という話でした。
・構造最適化って何をやるのか
http://www.quint.co.jp/jp/pro/ots/ots_fnc-tpo.htm
構造最適化というのは、もののダイエットのようです。上記の写真のように不必要な要素を削って最適化する。色々な目的はあるが、材料の削減によってコストを削減する目的が多いそうです。
構造最適化の方法として、主に以下の3要素が検討される。
(1)寸法の最適化 長さ、厚さ、などの寸法を変更することで変えていく。
(2)形状の最適化 <表面>を削って、変えていく。
(3)トポロジーの最適化 <表面>に加え、<内部>も変えていく
有限要素法などの話もあり、かなり専門的な話でした。 (あまり説明できずすみません)より高度な設計を導入したい場合はこういった会社さんが頼りになります。
東芝の方のお話。これまでCTスキャンを使った手法は、非破壊検査が主だったが、最近はデータ化して利用する例がある。リバースエンジニアリングの応用例として以下がある。
・設計データと、製造されたものの差異を確認する。
・鋳型などで中の「す」をスキャンデータから作成したモデルで解析し、作成時の温度パラメータなどのチューニングに利用する。
・経年変化したものを初期のデータと比較する。
・スキャンデータからミニモデルを作成する。
CTスキャンの原理から、現在に課題、ものづくりを行う上での解析への応用方法などの話でした。
4 3Dプリンタ向けの材料開発について
工業用の3Dプリンタや材料を開発されているアスペクトさんの講演。
アスペクトさんは前に展示会で造形品を見たことがありますが、かなりしっかりした造形品を扱ってました。価格もそこまで高くなく、用途があれば使ってみたいな、と思ってまして、今回どんな会社さんなのか知れて良かったです。
今回は3Dプリンタに使用できる材料開発についての話でした。
粉末燒結造形法について、造形原理や造形時の機器の取り扱いで難しいところなど、普段は目に見えない現場のところの様子が聞けました。3Dプリント品で、不良っぽいものに出くわすことがまれにあるのですが、あの時見たあれは製造時のこれが原因か、とか色々想像できました。
3Dプリンタの造形原理についてはこちらを参考
造形原理に加えて、材料についての話が半分くらいあって、例えば以下の樹脂の分類。
<樹脂材料のざっくりした分類>
樹脂材料ー熱硬化性樹脂
ー熱可塑性樹脂 - 非晶性樹脂
ー 結晶性樹脂 → これが燒結造形に向いている材料
3Dプリンタで扱える材料を開発する際の判断の指標としては、流動性や結晶化する温度、異方性があるか、などの各パラメータを見て、3Dプリンタで使える範囲であれば検討の余地がある。とのこと。
一般に使える材料の例としてはPA、PP、PBT、PPS などなど。(粉末材料 | 株式会社アスペクト)
強度と価格、加工性などの用途に応じて材料の選定ができることが我々ユーザとしては大事かな、と思いました。PAは扱いやすい材料、今注目されているPPSとか、頭にインプットしておきました。
AMシンポジウムというのが、東大であることを案内してました。AMってなんだ!と思いましたが、Additive Manufacturing (革新的設計生産技術) だそうです。
時間があれば参加してみたいですね。去年の目録見る限り、面白そうです。
東京大学生産技術研究所 新野研究室 - AMシンポジウムのご案内
2018の予定は以下だそうです。
AMシンポジウム Additive Manufacturing
まとめ
Autodeskの方の話は未来感が強くわくわくしました。たまにこういうの聞くとモチベーションにつながって気分がいいですね。
一方で長年ものづくりの観点で活動されてきた方の話で、そのような夢は人を魅せてくれるが、それをものにするには一筋縄ではいかない。努力と執念に勇気が加わって初めてなすことができる、と熱弁していたのが印象的でした。
夢をみることだけでなく、地道な努力ですね。